歯の中には、歯の神経である「歯髄」と呼ばれる神経組織があります。歯髄には、神経や血管、リンパ管を含む組織が存在しており、歯に栄養と酸素を供給する大切な役割を担っています。この歯髄が、虫歯の進行によって感染したり壊死してしまうと、歯髄を取り除く根管治療が必要になってしまいます。一般的に「神経を抜く」という治療です。
根管治療とは
根管治療とは、虫歯が進行した歯を抜くのではなく、少しでも長くご自身の歯を使用できるよう、歯を残すための治療方法です。
治療内容は、炎症を起こしている歯の神経を取り除き、内部を消毒して薬剤を詰めるといった、とても細かい治療が必要となります。他にも、神経の除去と薬の充填が終わると、被せ物の製作や噛み合わせの調整、仮歯の装着などと、根管治療は時間がかかる治療なのです。
根管治療の治療方法
・歯を削って神経を除去する
神経を抜く場合、まず虫歯を削って歯髄を露出させます。歯髄がでてきたら、「ファイル」と呼ばれる針の先端がヤスリ状になった器具で神経を除去していきます。その際に、上下に動かす「ファイリング」という動作をおこなうことで、神経をうまく掻き出すことができます。
・根管内の神経を除去する
歯の内部には神経が入っている箇所の「歯髄腔」があります。歯髄腔は「髄室」と「根管」に分かれており、髄質の神経を取り除くのは難しくないのですが、髄室から根元の方向に伸びて、神経や血管などが走っている根管は、細く曲がりくねっている上に複雑に枝分かれしているため、神経の除去は非常に困難になります。しかし、根管内に通っている神経もきちんと除去する必要があるのです。
・根管拡大
根管内の神経を取り除きながら、同時に細く曲がりくねった複数の根管の壁を、ファイルで削り、太くまっすぐな一本の根管に整えていきます。これを「根管拡大」といいます。
・根管充填
根管拡大した後、歯の内部を無菌化し、再度感染するのを防ぐため、内部を洗浄して最後に薬剤を詰める「根管充填」をおこないます。その際に無菌状態を維持するために詰める薬剤を「ガッタパーチャポイント」といいます。（自由診療の場合、「MTAセメント」という、殺菌作用、骨・歯を再生させる作用のある歯科用のセメントを使うこともあります。）
・被せ物の装着
根管の治療が終わったら歯の土台を装着して、通常の虫歯治療のように被せ物をするため、形を整えて型取りをおこない、被せ物を作って装着してから、噛み合わせの調整をおこないます。
根管治療が必要となる病態
・歯髄炎
虫歯が進行して歯髄にまで達すると、炎症を起こし「歯髄炎」となります。歯髄炎は歯髄の炎症が治療処置によって、もとの正常な状態に回復する場合は歯髄を除去する必要はありませんが、炎症が正常な状態に回復しない場合は根管治療をおこなう必要があります。
症状は冷たい物や温かい物がしみたり、じっとしていても鈍い痛みを感じることがあります。
・歯髄壊死
歯髄炎を放置しておくと歯髄が死んでしまう「歯髄壊死」となるため、温度刺激による痛みは感じなくなります。他にも、外傷によって脱臼した歯が歯髄壊死となることもあります。症状は神経が死んでいるため、歯の色が黒っぽく変色したり、虫歯があって冷たい物などがしみていた歯がしみなくなります。
・根尖性歯周炎
虫歯が根尖（歯の根の先端部分）や顎の骨、歯茎といった周辺組織にまで広がり、炎症を起こしてしまうすると、「根尖性歯周炎」と呼ばれる状態になります。
虫歯を治療せずに放置することで根尖性歯周炎にまで進行することもありますが、一度根管治療をおこなった歯が根尖性歯周炎となっていることのほうが頻度としては多いことが調査によって分かっています。
症状は、噛むと痛みを感じたり、歯茎から膿がでたり、不定期な強い痛みを感じるなどがあります。
神経のない歯は寿命が短かくなる
神経が残っている歯と神経のない歯を比較すると、神経のない歯の方が寿命は短くなりやすいです。神経のない歯は痛みを感じなくなっているので、もしも虫歯や歯周病になってしまっていても、気付くことが難しくなります。その結果、手遅れになるまで気付かない場合もあり、抜歯しなければいけない危険性が高くなってしまうのです。また、神経のない歯は酸素や栄養が行き届かなくなってしまうため、脆く割れやすくなってしまいます。そのため、歯の破折が起きやすくなり、抜歯のリスクが高くなってしまいます。
ご自身の歯を残すことは、自分の歯で食べ物をしっかりと噛むことができることから、健康で快適な毎日を過ごすことにも繋がります。ご自身の歯を長く残すためにも、なるべく神経を残せる段階で、大分県の歯科医院での虫歯治療をおこなうことが重要だといえるのです。