現代人の食事は、柔らかくあまり噛まなくても良い食べ物を好む傾向があるため、顎や舌の筋力が衰えてしまうことで、歯並びや噛み合わせが悪くなったり、唾液の分泌量が減るといった口腔内の様々なトラブルの原因になってしまいます。1度の食事で噛む回数は、弥生時代の古代人の場合、約4000回だったといわれているのに対し、現代人は約600回と6分の1以下になっています。この原因として、ファーストフード店の普及や、調理をすることで柔らかくなる食べ物が増えたこと、忙しい毎日のために食事時間が短くなってしまったことなどが考えられています。「噛む」ということは、食べ物を噛み砕く以外にも、とても大切な役割を担っているのです。
噛むことの重要性
消化器官の負担を軽減させる
よく噛むことは唾液の分泌量を増やします。唾液の分泌が多くなることで、唾液に含まれる消化酵素「アミラーゼ」が効果的に作用するため、消化器官の負担を軽減することができます。
歯並びが整う
歯並びが悪い大きな原因として、歯が並ぶための顎のスペースが足りないことが挙げられます。元々、日本人は顎が小さいのですが、さらに良く噛まないことで顎が成長しきれず、歯が生えてきてもキレイに歯列に並ぶことができないのです。よく噛むことは顎の成長を促すので、顎が発達することで美しい歯並びが期待できます。
脳の血流がよくなる
脳の血流がよくなると大脳の働きも活性化します。歯が全くなく噛めない方と、ご自身の歯で噛んで食事をすることができる方とでは、ご自身の歯のある方のほうが活動的という調査結果もでています。さらに、噛むことで脳に刺激が伝わり活性化するため、記憶力の向上や認知症の予防にも効果が見られます。
虫歯や歯周病のリスクを下げる
唾液には、自浄作用や抗菌作用があるため、口腔内の食べカスや細菌を洗い流したり、虫歯菌が作りだす酸を中和して歯のエナメル質の再石灰化を促したり、細菌の働きを抑えたりすることができるのです。そのため、よく噛むことで唾液の分泌量が増えることで口腔内を清潔に保つことができるので、虫歯や歯周病のリスクを下げることにも繋がり、歯の健康が守られるのです。
食べ過ぎを防止する
良く噛んで食事をすることで「セロトニン」というホルモンが放出され、満腹中枢を刺激し満腹感を得ることができるため、食べ過ぎを防止することができます。さらに、よく噛むことで内臓脂肪の分解が促進されることも研究で分かってきています。ただし、このセロトニンは必須アミノ酸、ナイアシン、ビタミンB6、ビタミンB9、鉄を含んだ食べ物から取り込まなければ、体内で生成することのできない物質であるため、ファーストフードなどのような偏った食事をしていると、しっかり噛んで食事をしたとしても、生成する原料が食べ物に含まれていないのでセロトニンが放出されず、満腹感を得ることができないのです。食べ過ぎ防止のためには、食生活の見直しも重要です。
しっかりと噛んで食べましょう
毎日の食生活に、噛みごたえのある食べ物を意識的に取り入れることはとても大切です。また、子供の頃から硬いものをよく噛んで食べることで、顎の成長が促進されて良い歯並びや噛み合わせになることも期待できます。そのため、肉や魚の他にも繊維が多く含まれているゴボウなどの根菜類や水菜、ネギなどの野菜も歯に良い食べ物なので、積極的に食事に取り入れましょう。また、繊維が多く含まれている食べ物は、腸内環境を整えたり栄養面でも優れていますし、口腔内を清潔にする働きもあるのです。
顎関節症のリスクが高くなる
あまり噛まない食事を続けることで顎の筋肉が衰えてしまうため、歯並びや噛み合わせのバランスが崩れてしまうことがあります。悪い噛み合わせを放置することで、顎の関節に違和感を感じたり、口を大きく開けると痛みを生じる、開閉の際に顎が「カックン」と音が鳴る、頭痛や肩こり、耳の調子が悪いなどといった「顎関節症」の症状を引き起こす場合があります。顎関節症の原因は様々ですが、悪い歯並びや噛み合わせはリスクを高くしてしまうのです。
顎関節症は慢性的疾患なので、治療は即効的なものはなく、治療期間が長引くことが多いことから、顎関節症にならないよう予防することがとても重要です。そのためにも、幼少の時から食べ物をしっかり良く噛む習慣をつけることが大切です。テレビを見ながら横を向いて食事したり、唇を閉じないで食べたり、左右の奥歯でバランス良く噛まないといった食べ方をしていると、噛み合わせが悪くなる原因になるので気をつけましょう。また、定期的に大分県のかかりつけの歯科医院で検診を受けるようにして、顎関節症だけでなく、口腔内全体の管理をしっかりとおこないましょう。