ショートインプラントとは
今まで、インプラント体は長いほど初期固定が得られるため、インプラントが安定しやすいという考え方が主流でした。そのため、上顎の後方の上顎洞の骨の高さが5~7mmになる場合や、下顎の後方に入れ歯を長年使用していたり、重度の歯周病で歯を失ったりしたことにより、骨の高さが5~7mmとなってしまった場合、インプラント体を埋入するための骨の高さが十分でないため、ほとんどの場合は足りない骨の高さや幅などの骨量を増やす「サイナスリフト」や「ソケットリフト」といった骨造成手術をおこなう必要があり、患者さんにとって身体的・精神的・経済的負担が大きくかかってしまう治療をおこなうしかありませんでした。さらに副鼻腔炎の既往があることで、上顎洞への骨造成ができない場合や、下顎菅(下顎骨に存在する管で、下歯槽神経、下歯槽動脈、下歯槽静脈が中を走行する管)までの距離が近い場合では、インプラント治療をおこなうことが難しいとされていました。しかし、このような場合にショートインプラントを使用することで、これらの負担から解放される可能性が高くなりました。
近年、インプラントが長期に安定して使用できる治療法であることが認識されていることから、ショートインプラントという考え方が紹介されています。ヨーロッパでは、4mmというショートインプラントが発表されており、今までのように骨造成をおこなう必要がなく、既存する骨の部分に埋入する方法がおこなわれています。ショートインプラントは、インプラント体が短いため、大きな外科的侵襲を伴わないことが最大のメリットですが、インプラント体が長い方が骨との接触面積は大きいため、今後のショートインプラントの長期経過観察をしていくことが重要であると考えられています。
ショートインプラントのメリット・デメリット
ショートインプラントのメリットとして、上顎洞を触ることがないため副鼻腔炎になるリスクがないという点や、下顎管に近い手術に使用した場合に神経麻痺が起きるリスクがない点、骨の量が足りない場合も、大がかりな手術によって骨を造る必要がないため、痛みや腫れを最小限に抑えることができる点などがあります。
反対にショートインプラントのデメリットは、短くて太いインプラント体であるため、前歯のインプラント治療には使用できないという点や、新しい治療法であることから、まだ長期的なデーターが出揃っていない点、インプラント体が短いので、インプラント体の本数が増える傾向となる点などがあります。